1本の動画が運命を変えた|Pizzeria Aletta 赤羽 勇治

漠然と一日が終わる日々

出身は長野県松本市です。
高校を出て、すぐ料理人になろうとしたわけではありません。
しばらく父が建設の仕事をしていて、独立するタイミングが重なって、一緒に働いていました。内装業です
期間は、5年ほどです。
将来したいことが定まっていない。夢も無く、ただただ一緒に働いているだけでしたね。
ただ、日々を過ごしていました。
その時は、父親の後を継いで、「建築の仕事をこれからやっていくんだろうな。」と思っていました。

一本の動画が運命を変えた

料理は、家で自分の分を作るぐらいはやっていました。
今の仕事に就くきっかけは、ある時、「ピザを作ってみたい。」とふと思ったことです。
作り方が分からないので、インターネットで調べました。
調べている中で、そこでたまたまピザを回している人の動画を見て、「なんだこれは!」と衝撃を受けました。
その動画はピザを作っている動画ではなく、生地を振り回してお客さんを楽しませている海外の動画でした。「こんな世界があるのか。」
自分が考えていたものとは全く違っていたことが衝撃で、「おれもやってみたい!」と思いました。

調べていくうちに、ピザ生地を伸ばす練習用のゴムが売るっているのを知り、すぐに通販で買いました。
それからは見よう見まねで練習をしていて、最初は趣味の感覚です。
そして、美味しいピザが作りたいのではなく、とにかくピザを回したいという感情です。(笑)
仕事が終わって家に帰ると、そこから公園に行って、回しての繰り返しです。
料理とは全然違っていて、大道芸に近いと思います。

ピザ回し日本大会へ

参考動画はあったのですが、早すぎて最初は何をやっているかわかりませんでした。(笑)
「教えて欲しい。」という気持ちを持っていたので、そういった場がないかと調べていると、練習用ゴムの販売元にピザ回しサークルがあることを知りました。場所は埼玉です。
月に1回ぐらいで、開催されているサークルだったので、なかなか毎回行くことが出来なかったのですが、2、3か月に1回のペースで参加していました。

そして、長野、埼玉で練習しているうちに、ピザ回す日本大会が初めて行われることを知りました。
それが2012年です。
サークルのメンバーから「出場してみない?」というお声掛けが合って、せっかく練習しているのであれば大会を目標にしたいと思い、大会開催日に標準を合わせて練習をし、大会に出場することを決意しました。
大会には3つ部門がありました。
職人向けの生生地の部門、練習用のラバーでパフォーマンスをするラバー部門、500gの生地をどこまで大きく伸ばせるかのグランデ部門。

ピザ回しに出会って1年目の時です。
私はラバー部門で出場し、1年目だったのですが、勝っちゃいました。(笑)
お店にもメダルを置いてあります。

ラバーと過ごした半年

大会に出場するまでの練習期間は約半年でした。
半年と聞くと短いと感じるかもしれませんが、その半年間は本当にみっちりやりました。
始めた1年目は気持ち悪いぐらいに練習していましたよ。(笑)
仕事するか、練習するかの2択でした。
家の近くに公園があるのですが、仕事終わったらすぐそこへ行って、ラバーが真っ黒になるまで練習して、家に帰った後は、ラバーと一緒にお風呂に入って洗ってあげるという生活をしていました。(笑)


当時は、ピザ回しを始めるきっかけになった動画の衝撃が強すぎて、何も考えずに練習し続けていました。
「こんな風になりたい!」の一心です。
大会が行われる数カ月前の夏に公園で練習をしていたら、たまたま見ていた方に、「上田の夏祭りの催し物の1つとしてやらない?」とお声をかけていただいて、大会前の度胸試しではないですけど、多くの人の前で披露する機会を頂けました。
それは、すごい良い経験になったと思います。
長野県でピザを回す人が私しかいないので、一緒にやる仲間はいなくて、孤独でしたが、周りで見てくれる人や、応援してくれる人がいたのでそれが励みになって続けることができました。

ピザを“回す”から“食べてもらう”に

大会主催の協会の方が関東でお店をやっている人でしたが、優勝したことで、その方から「うちのお店おいでよ。」とお誘いを頂きました。
「ピザ職人としてスキル身につけてみない?」ということで今まで趣味でやっていたものから本格的に学ぶことに決めました。
今まで、ピザは回していましたが、料理人としては素人だったで、料理の技術を学びにいく為です。
松本に帰って、父親に「おれピザ職人になるわ。継がない!」と話をしました。(笑)
翌年に仕事を辞め、先輩たちのいる埼玉のお店で働き始めました。

埼玉のお店では3年間働いていました。
働き始める時に3年と区切りを決めて、3年終わったら自分でお店を持つことを決めていました。
これはお店にも伝えていたことです。
この3年間では、パフォーマンスと料理はもちろん全然違うので、たくさんの壁にぶつかりました。
ピザを見てもらうのではなく、ピザを食べてもらうので、味の部分は苦戦しましたね。
美味しいモノを提供するという事には、ほぼ未知だったので。
壁を1つ1つ乗り越えていく中で、3年経った頃にはある程度自信がついて、自分自身で納得が出来るほどになりました。
そこからお店を出す準備を進めていきました。

お店を始めてからの苦悩

物件は、イメージしていたものがあって、物件を探している中でイメージと近いものがあったので、ここで勝負しようと決意しました。
オープンは今年の3月28日です。
オープン前に考えていたことと違ったことは、正直結構あります。(笑)


長野から関東へ出て行って、ピザ屋さんで働いていましたが、向こうだとそもそも人が多いですし、やればやっただけ出るしという状況でした。
その為、松本でもお店を出せば、成功できるだろうなと思っていました。
実際に、お店を持ってみると、若さ故の勢いと甘さしかなかったと感じています。オープンから1年経ってみたら、自分がやりたかったことだけしかできていないという印象です。
やはり、お客様あっての商売なので、私がやりたいことだけやっていれば良いわけではない。そういう学びはありました。
お客様が求めているものを出さなければならないので、「ピザ回してすごいでしょ!」「このピザ美味しいでしょ。」だけではうまくいかないことを痛感しました。
ピザだけやっていれば上手くいと思っていたけど、そうではないんだって。
夏暑くなってきて、お客様がピザ食べたいかといったらそうでもないし、
かき氷のほうが出るし。(笑)
縄手通りは、観光地なので冬は全然人通りがないんですよ。
埼玉であれば、人が一定数いたので関係なかったのですが、、、。
こういう地方の観光地は売れ幅があるので、正直冬はきついです、、。
いろんなことを想う中で、考え、行動の繰り返しで、試行錯誤のしている状態です。
本当にたくさんの事を学びました。

今後の展望

自分は散々ピザを回してきて、もともとが料理人ではないので、他の皆さんも僕のこと料理人と思っている人っていないと思うんですよ。(笑)
なので、個人としてはパフォーマーではなく、1人の料理人として認めてもらいたい。
回す大会ではなく、料理の大会で結果を残せればと思います。

お店の事に関しては、信州の誰もが愛してくれるメニューを1つ作りたいなと思います。
地元の人の馴染みになるメニューです。
地元の食材を使った、ここでしか食べることのできないメニューを考えています。

私のプライベート

休みの日もピザを作っています。(笑)
熟成製法という作り方があって、生地を3日間寝かせる作り方です。そうすることで、よりおいしくなったり、香りが良くなったりします。
水曜日が定休日ですが、水曜日も仕込まなければならなかったりするので、休みの日もピザをつくっているという事です。(笑)
自分がやりたくてはじめたことなので、しばらくは良いです。(笑)

最後に一言

イタリアンレストランは敷居が高くて、子どもがいると騒いでしまったりと、なかなか家族で来れないのではないかというイメージを持たれていると思います。
ですが、この店はむしろお子様に来てもらって、ピザを回すところを見てもらって、騒いでもらいたいなと思っています。
その為、キッズスペースも用意しています。
アットホームな空間を用意しているので、気軽に足を運んでください!!

五感に訴える活力ベーグルを|ナチュラルベーグル歌 小熊 かずこ

飲食から離れて気付いた素直な想い

出身は埼玉です。それから東京の大学へ行ったり、東京へ住んだりといった生活をしていました。大学時代はクルクルパーでしたね。(笑)
当時は、ブラジル音楽に没頭していて、ラテン音楽を演奏するサークルに属していました。入学の時にオリエンテーションでサンバパレードで練り歩いている人がいて、その人たちが気になってしまって。(笑)
そこから部室のドアを開いたのがきっかけです。どっぷりつかって色々聞いたのと、実際にブラジルまで行ったりしました。バンドはずっと続けているので時々、ブラジル音楽を演奏したりしています。

学生時代のアルバイトは飲食をずっとやっていましたが、あまり深く考えずにアルバイトをしていました。手っ取り早いと思ってやっていたのと、あとはまかないが食べられるとか。(笑)
深い意味はなくやっていたけど、振り返るとずっと飲食が好きでやっていたと思います。オフィスで一瞬働いたことがあるんだけど、やっぱり匂いが無かったり、食器の音がしなかったり、蒸気の音がしなかったり、火の音がしなかったりとかなんかつまらなく感じて。五感に訴えてこない。だからそれがものすごいつまらない、合わないなと感じて、それから「ずっと飲食を好きで選んできたんだな。」と後から気づきました。

長野でお店を

大学卒業後は、結婚、出産があり、戻ってきた後もランチを手伝う飲食から始めました。
長野県に来るきっかけは、パン屋さんで何年か働いていた時に、移動販売のカフェを最初やろうと思っていたことです。その移動販売するための工場を探していて、どこが良いかなと探していたことがきっかけです。長野で最初からやろうという気はなかったのですが、親戚絡みの関係で、長野に縁があり、今の場所でお店をやることとなりました。外見はお店っぽくないけれど、作る場所として利用するのならば、誰か見に来るわけでもないし、問題ないのではという事で使うことになりました。
ただ、工場にするのにも改装位にお金がかかるということで、そこまでお金をかけるのならば、ここで店舗として使ってしまえばと言う発想に変わりました。

関東圏でしか暮らしたことが無く、長野で暮らすことにいろんな驚きはあったのですが、いろんなことが「良いじゃん!」と思えるようになりました。水も綺麗だし、野菜も美味しいしといったことです。当時、有機野菜などの良い野菜を遠くから取り寄せるという事をやっていて、それに対してはちょっと不自然さを感じていました。それが地元の良いものを食べることができるという自分のライフスタイルより自然な形で実現できるのではないかと思って、逆に良いじゃないと思うようになりました。

ベーグルを焼くまで

お店を始めてからは今と同じベーグル屋をずっとやっていたのですが、当時は販売だけやっていました。当時、あまりバターや乳製品を取らない生活をしていたことや、パン屋さんで働いていた時も、アレルギーで乳製品を食べれない子が増えているという実感がありました。
なので、そういった子でも誰でも食べることが出来るパンを作りたいと思っていました。当時、一緒に働いていた若い男の子たちもたくさんパンを食べていると健康診断に引っかかってしまうんです。理由は、糖分や、油脂の取りすぎです。
なので、「これを毎日食べていたら体に負担かかるよね。」と思って、毎日食べても負担が残らないものをどんどん絞っていった結果、ベーグルになりました。
ベーグルのゆでて焼くという工程が、国産小麦のモチモチとした触感と良く合うのではないかという気持ちもありました。

10年の節目を迎えて

お店は今年で10年になります。
当時小学生だった子が上京をして、お母さんがその子に「ベーグルを送ってほしい。」と言ってくれたりします。その子にとっては故郷の味ではないけど実家の近くにある懐かしい味になっているというのは、意外ですごくうれしいことですね。
自分だけでなく、お客様といった周りのことでこの月日を実感します。

この10年間は、「お客様に嘘をつかない」という事を大切にやってきました。
また、自分にも嘘をつかないという事にも繋がると思います。
嘘をつかないというのは当たり前のことなのですが、「○○産の物を使っています」といったことや、失敗して崩れてしまったら正直に伝えて、安く販売すると言ったことです。
地域のご高齢の方や、子育て世代に支持されているかなという気がしています。
無添加や、地元の野菜を使っているといったことを前に出しているので子育てに気を遣っている方に支持されているかなと感じています。

労働体系というか自分の働き方にも意識を置いてやっています。飲食店ってどうしても長時間労働になりがち。特に店主は人件費を削るために自分で働いたりとか。そこをどうにか新しいやり方でやっていきたいなと思っています。これから年を重ねていくし、自分が疲れてしまっては良くないので、もう少しゆとりのある働き方をしたいと考えた時に、「少し違うかな。」という想いがあって色々考えているところです。
なにかあるのではないかと思っていて、みんなヘトヘトになるのではなく、無理なくコンパクトに働くスタイルを構築していきたいと思っています。

私のプライベート

普通の生活が好きだなということを自覚してきています。ただ、お家の外にでて月を見ながらコーヒー飲んだり、ビール飲んだり、生活そのものを楽しむことが好きです。それは気持ちにゆとりがないと出来ないと思ったりもしています。
少しテーブルを彩良くしたり、家をきれいにするのもそうです。生活そのものを好きにすることを楽しんでいます。

最後に一言

父親だったり、母親だったり、会社員だったりいろいろあると思いますが、日々の肩書きを外して、自分の時間の為にゆっくりいらしてください!

ナチュラルベーグル歌
■住所 長野県松本市深志3-8-17
■営業時間
ベーグル販売 10:00~18:00(売切れ次第終了)
カフェ営業  10:00~17:00(16:30ラストオーダー)
定休日 月、火(不定休)
■TEl 0263-35-8876