コーヒーが持つ不思議な力|TRACK Coffee 村田 容充/村田 亜希

インタビューをお受けするにあたり、、、
わたしたちのお店のルーツは、自分たちの心の中に留めておくべきだと考えていました。
しかしながら、せっかく頂いた機会ですのでお話しさせていただきます。

仕事と生活

村田容充(以下、T):出身は、大阪府枚方市です。大学卒業後、大阪本社のメーカーに就職し首都圏にて勤務していました。その後、30代で結婚後、息子を授かりました。私が働き方を考え始めるきっかけとなったのは、その息子の誕生です。

残念なことに息子は先天性の疾患を持って生まれてきました。生後間もない頃より大きな手術が続き、入院生活も長く在宅している時も通院と介護が続きました。容態が難しい時期もあり本当に壮絶な日々でした。彼が入院中は親ですら面会時間が短く仕事後では面会時間に間に合わず、さらに、週末の休みも取れない週が続くと息子に会うことが出来なくて、当時は本当に辛かったですね。そういった生活を続けている中、妻が体調を崩してしまい、会社の理解もあり介護休暇を取らせてもらえることになりました。とてもありがたかったです。
その頃より「果たしてこの生活を続けていて良いのだろうか。」と思い、このまま復帰するのか、自宅で息子を診ながらできる職業はないだろうかと、考え始めるようになりました。
焦る気持ちも正直ありましたが、時間を作ってはセミナーの受講や通信講座を受けながら模索していましたね。

不思議な力

村田亜希(以下、A):息子が入院中、病状が思わしくないときは病室に泊まり込んでいる時期もありました。主人が付添いの交代の際にいつも温かいコーヒーを持ってきてくれ、その時飲むコーヒーは、特別温かく感じました。
あらためて「優しい人だな。」と思い、コーヒーは美味しいのはもちろんですが、時には人の心を満たすものだと思いました。
今は大きな病院へ行くと大手コーヒーチェーン店さんが入っていますが、当時は本当に寂しい感じの食堂や自販機の缶コーヒーしか無く、それでも温かい飲み物が飲め、また、主人が持ってきてくれたコーヒーはありがたかったことを覚えています。

T:疲れている時にコーヒーがあるとホッとしますし気持ちを切り替えることができる。
コーヒー1杯に助けられた気持ちがあります。この経験は大きかったと思います。

長野県に来た理由

T:長野県に来た大きな理由の1つは、小児の高度先進医療施設、こども病院があることです。
私たちが長年暮らした横浜市の他に、静岡、兵庫、福岡、仙台、埼玉とありましたが、当時の主治医の先生から長野こども病院の専門医の先生を紹介して頂いたことがきっかけです。
そして何よりもこの自然豊かな環境で息子を育てていきたいと考えたからです。


また、長野県には、学生の頃よりスキーや合宿、登山で訪れる機会も多く、スキー場でもかつてアルバイトをしていました。関西の人にとっては意外なことに長野はとても身近な場所でもあるのです。

A:安曇野で暮らすようになってからも、神奈川のこども医療センターで手術を受ける必要があり横浜に戻る期間がありました。息子も調子が悪い中、環境が変わり検査、手術、治療が続き精神的に不安定になっていました。彼は言葉を発することはできませんが、「安曇野へ戻りたい」と必死に訴えていました。


私たち自身も親類や知人もいない中で、出会った方たちの温かさや繋がりを感じこの環境が一番。他では暮らせないと思いました。朝起きた時に見える山々。清々しい空気や風。広い空。夜にはこぼれてきそうな星空。
雄大な自然に抱かれた地域は日本中にはきっと他にも多くあるかと思いますが、私たちが辿り着いたのは安曇野でした。

“TRACK”…日常の通り道

T:店名にしている“TRACK”は列車の線路、軌道という意味の他に、や動物の通り道、人生の航路という意味もあります。日常の通り道のように、街の方も旅の途中の方も、山の方もフラッと立ち寄って頂きコーヒーを飲みながらホッと過ごしてもらえたら良いかなと思っています。特別なものはありませんが。
そして、お子様からご年配の方まで入りやすい場所でありたいです。テイクアウトもして頂けます。

A:小さなお店ですが、お客様には自然や季節を感じながら寛いでいただきたいです。
大昔になりますが、20代はじめに数か月間過ごしたシアトル近郊の町には地元の方や学生たちが集う居心地の良いカフェが多くありました。季節の植物が店先に咲き、開放的な空間で地元の方に慕われて日常に溶け込んでいましたね。
私たちのお店も風が通り抜けお客様にとって心地よい日常の通り道でありたいです。

ブラボー Bravo!

コーヒー片手に気軽に食べていただけて、コーヒー泥棒(笑)になるようなホームメイドのお菓子をつくりたい一心でできあがったのがブラボーです。
製菓の勉強をした訳ではないので、とにかく試作、試作、試作...を重ねました。
初めは丸い形のシュークリームからはじまり、他にもクッキーシューなど生地づくり、クリームづくりと試行錯誤して作っては、知人や友人たちに試食してもらい、率直な感想や意見を糧に作っていきました。


最終的に行き着いたのがクレアタイプで、かつザクザクとした香ばしい生地の食感を楽しんで頂けるように、ご注文をいただいてからクリームを詰める現在のスタイルとなりました。
「エクレール」は仏語で「雷・稲妻」の意味で、その名前の由来には「稲妻のように素早く食べるべし!」との意味で名付けられた説もあるとか。
「ブラボー」、コーヒー片手にブラブラ歩きながら気軽に食べれるボウ状の、そして思わずブラボー!
と感じていただけるおやつだと嬉しいです。ありがたいことにこの地域は地元の小麦粉、たまごを使えること、添加物は一切使用しないこともポリシーです。

わたしのプライベート

T:もともと身体を動かすことが好きです。短い時間でもジョギングなど体を動かすようにしています。
山に行く機会も増やしていきたいです。
息子ともできる限り自然の中で過ごせる時間をつくりたいですね。この春、彼の卒業記念に仲間たちにサポートをしてもらい息子と一緒に山歩きができたことは家族にとっても良い思い出になりましたね。

最後に一言

Coffee-your pathway to happiness!!!!
ハンドドリップコーヒー、エスプレッソメニューもいろいろございます。
気分転換などに気軽にお越しください!お待ちしております!

葛藤を表現する場所|The Storyhouse Cafe クック クリス/クック 久美

子育て中に感じた想い

最初の出会いは、12年ぐらい前に、私が学生の頃にシアトルに留学に行っていた時です。
留学中に交際を始めましたが、私は1年間で留学を終え、日本に帰ってきました。
その後も遠距離で交際を続けていて、卒業後は、2年半ほど日本で就職をして、結婚を機にシアトルに行きました。シアトルでは3年ほど住んでいました。
その間に1人目の娘が生まれ、その時から子どもの育て方や仕事のやり方を考え始めました。
そこで思ったことは「働きながら家族の時間をもっと持ちたい。」ということでした。
夫は朝7時ぐらいに家を出て、18時ぐらいに帰ってくるサラリーマンをしていていました。そういった生活に私はずっと娘の成長を見ていますが、一緒に育てている感があまりなくて、せっかく日本の文化、アメリカの文化の両方を教えてあげられるのに「もったいないな」という想いがありました。
家族で過ごせる時間を持ちながら、私たちが出来ることは何かなと考えた時、その答えは自分たちでビジネスをすること。そして、考えた末行き着いたのが、”カフェ”をやることでした。

葛藤を表現する場所

文化的な違いがすごくあると思うのですが、子どもがいると今までの生活スタイルが変わってきて、日本だとレストランに行くにしても子どもがいると「騒いでしまったらどうしよう。」といったことを考えてしまいます。でも、アメリカでは、そういったことに寛容なところがあります。
アメリカでは、お店にキッズスペースがあったり、子どもの為の制度も充実しています。
日本での子育ての難しさや、生きづらさを感じて、そういった葛藤をお店で表現しています。
その取り組みの1つがお店でやっている「Story Time」です。
子ども為の読み聞かせを向こうでは図書館でやってくれていて、それがすごい良いなと感じていました。
英語や中国語、スペイン語など色々な言語の本を無料で読み聞かせてくれたり、歌であったり、様々なことをやってくれます。
そういったアメリカにはあるけど、日本ではまだ整っていないものが出来たら良いなという想いをカフェで表現することにしました。

子どもたちも一緒に家族で来ることができる場所作りが前提となっています。
また、そのような場所に英語をプラスした空間を作りたいと思っています。
今後、英語が子どもには必要だと思っていて、レッスンに通っている子は多いと思います。ただ、習うだけでなく、習ったことをお店で使う事や、実際に、「外国人はこういう風に会話するんだな」ということをここで知ってもらえればと思います。

働き方と生き方

夫が以前、会社で働いていた時は、この生活が「楽しくない。」と話していました。私はその発言に対して、「そんなに楽しくないなら、違う仕事をすれば?」とずっと言っていました。
違う会社で働くことも考えたのですが、結局は、会社の中で働くことが楽しくない。
であれば、「自分たちでビジネスをやりたい。」と思い、サラリーマンをやめる決断をしました。

なかなか仕事を辞めるという決断は難しいと思いますが、夫は、「仕事が大変だ。」「仕事がつまらない。」と思いながら仕事をやっている人も理解はできるけど、そういう人を見たら「違うことをやれば?」と思うというのはいつも言っています。
今は、変わってきたと思いますが、日本では社会的に転職のイメージがあまり良くないので、そういう面ではアメリカでは、仕事をしながら大学へ行く人も多くいますし、30代でも派遣みたいなところでいろんな仕事をしている人もいるので、働き方の選択肢はアメリカの方が多い印象は持ちました。

収入は不安定だし、不安もあります。
ただ、今は、会社にいるときの、「誰かの為に働いている。」といったストレスを感じずに働いています。
幸せの定義は人それぞれだと思いますが、今は家族の時間があり、ストレスを感じずに働いている。自分たちでやっている分、「これやりたい!」を実現できる環境はとても楽しいなと感じています。
失敗しても、成功しても全部自分に返ってきますが、、。(笑)

松本に住んだ理由

出身は横浜の方で、松本には縁もゆかりもありませんでした。
アメリカから日本に住む場所を変えるにあたって、いろいろ条件を付け全国で探していました。
松本には旅行で来たことがあったのですが、夫が山や、松本城が好きというのもありますし、私も子育てをするのにどういう環境が良いかと考えると自然が近くにあるのはすごくプラスに思えました。

あとは、街のサイズです。
2人でやっていくのにあまり大き過ぎず、かといって小さ過ぎずというところで長野県のどこで住もうかなと考え、松本に住むことに決めました。

プライベートでは

普段は、私と夫は英語で話しています。私と娘は80%日本語。夫と娘は英語で話しています。喋り始めた2歳~2歳半ぐらいの時には、日本語、英語の区別がつかなくて、両方を喋っていましたが、ある日パパに日本語で話しても伝わらないことに気づいて、そこからは人によって使い分けるようになりました。(笑)

大切にしていること

カフェはオープンして1年半経ちました。
大切にしていることは、自分たちもお客様も楽しめる空間を作ることです。
なので、山のパンフレットを置いたり、自分たちで改装を行ったので、DIYが好きな人に見てもらいたいと思ってますし、自分たちが好きな物をお客様に楽しんでもらいたいと思ってます。
DIYに関しては、もともと旅館だった物件を全部夫が作りました。(笑)
特別な大工経験は無かったのですが、基本的な床を張る、壁を作るといったことはできるので、次はカウンターを作ってとやっていったらお店が完成しました。(笑)
「こういう事が好きだよ」「こういうので楽しんでる」といったことをお客様に見せることで、お互い共鳴し合えれば出来たら良いなと思っています。

今後の展望

やりたいことはいっぱいあります!(笑)
2店舗目のお店をもったり、違う業態のバーをもったり!(笑)
2か月に1回ぐらいのペースで、お店にミュージシャンを呼んで音楽イベントをやっているのですが、狭いのでもっと広いライブにしたい!とか(笑)
やりたいことはいっぱいあって、常に「こういったことをやりたい」と考えることは、楽しいし、生きがいにもなってます。

最後に一言

誰でも楽しめる空間を作っているので、気軽に足を運んでいただいて、楽しみながらホームメイドの物を食べにきてください!!