挫折の先に|有限会社神農素 丸山 隆英/丸山 真里子

先代の想い

出身は中野市です。学生の時に2年程東京へ出ていましたが、ほとんど長野県で育ちました。現在の仕事の前は実家が飲食店なので、その手伝いをしていました。
この仕事に就くきっかけは、もう亡くなっているのですが先代の神農素の会長が私の父で、生まれながらの畜産家だったことです。40年程畜産をやっていて、エサによって良いお肉ができることを研究していました。自ら土壌地質から酵母菌を見つけ、その酵母菌をうまくエサにできないかということを研究していました。また、酵母菌で発酵させることによって人間が残した食品残渣を再利用する事業を会社化したかったのが先代の願いでした。

父は40年間、その酵母菌をずっと温め続けており、その会社を設立すると相談を受けたときはあまり賛成することができませんでした。なぜなら、父は研究熱心なことは知っていましたが、それが世に出ることは考えられなかった為です。最後には私たち姉妹全員が、賛成をして会社を設立しましたが、その道には困難が多くありました。

挫折の先に

酵母菌を菌バンクに登録するまでに10年、特許を取るに8年程かかりました。酵母菌自体では特許を取ることができず、「どう特許をとるか。」を試行錯誤しながら探っていた日々でした。最終的には飼料を作るための過程を申請し、無事、特許を取ることができました。

特許を利用して事業を始めたのですが、実験、試験レベルを事業ベースに持っていくのにはすぐ結果が出ませんでした。エサを買ってくださる農家さんがいなかったんです。そこで一つ挫折をしました。食品残渣は沢山集まって原料はあるのに飼料を買っていただくことができない。
良いものを作っている自負ありましたが、それを証明するものがない。特許ばかり先走ってしまって、世に出すことができませんでした。
そのような経験から11年前、「自分達の飼料で自分達で豚を育てよう。」と養豚事業をやることにしました。
最初は20頭、それが40頭とどんどん増やしていくことができました。しかし、頭数が増えていくにつれて特許を取得した方法だと上手くいかない、、、。

「なんとかしなければならない。」と現社長が酵母菌をもとに色々試行錯誤をし、新しい方法を開拓したんです。それが「神農素菌」です。この経験から「特許だけでは食べていけない。」と勉強になりました。

信じ切るということ

うまくいかないことはたくさんありましたが、会社を設立して、株主さん達から支援をしてもらっていた中で「後戻りはできない。」という気持ちが強かったです。
また、自分達のやっていることに強い自信がありました。当初、商品になる豚が少なく、小さく売りにならない豚ばかりでした。その豚を引き取って私達が食べたのですが、その豚がとっても美味しくて衝撃を受けました。私は脂が苦手で豚肉があまり好きではなかったのです。しかし、育てた豚を食べたときは牛肉の脂のような脂だったので、改めて衝撃を受けました。


小さく商品にならない豚でもこんなに美味しく出来るなら、「この豚を大きくするだけで商品にすることができる。」と私もそうですし、社長も先代の父も信じ切っていたようです。
出来上がったお肉はとても美味しかったので、あとは波がなく安定して美味しい豚を育てるということだけでした。そこには「出来ないはずが無い。」という強い信念がありました。

今では、「豚肉って臭いな。」「脂がくどくて嫌だな。」と思われているお客様が酵母豚を召し上がった時に「あの豚だったら食べられる。」「今まで食べられなかったけれど食べれるようになった。」と喜んで頂けるまでになっています。
やっぱりお客様からのお声が一番嬉しいです。本当に信じてやって来てよかったと思います。

一人でも多くの方に

生産者様の中にはチーズや食パンをあげたり、ビール、日本酒をあげたりとこだわりを持って育てている方が多くいます。うちのこだわりはそのまま与えるのではなく、酵母菌で2週間以上発酵させたものを与えていることです。なので、体内吸収が良いはずなんですね。時間と手間暇をかけて飼料を作っているからこそ美味しい豚肉ができると私たちは信じていますので、その自信は強く持っています。

また、週に80頭前後の出荷をしているのですが、精肉の商品にならない豚をどうにか利用することはできないかと考えていました。豚を一頭使ったウィンナーや、ロースやバラはそのままベーコン、ポルケッタにしています。パテは「ぼたんこしょう」という中野市の名産を入れてさっぱりとした風味にしています。このように出来るだけ使えるものは皆さんに楽しんでいただく努力をしています。

その豚から出た有効発酵堆肥をまた農家さんに使って頂いて、次は野菜に還元していく。まさしくリサイクルをやっているので、多くの方に知って頂いて、ただ美味しい豚でなく、地域に貢献できる企業を目指しています。

中野市の中では徐々に酵母豚が伝わっているのですが、もっと多くの人に召し上がって頂いて、「信州といえば酵母豚」「信州に来たらこれを食べよう」「贈り物はこれにしよう」と言っていただけるように一歩でも近づけたらと思っています。
一人でも多くの人に召し上がって頂いて実感していただければと思います。

私のプライベート

食べ歩き、飲み歩きです(笑)ちょっと飲みすぎてしまうかもしれませんね、、。(笑)なんでも飲みます!昔は浴びるように飲んでたようですけど、。(笑)自宅では庭でBBQをやるのが定番になっています。自社製品も使っていてベーコンとポルケッタが人気です!

初孫が5月に生まれました。可愛いですね、、。息子、娘がとっても仲が良くて、一緒に買い物に行ったり、旅行に行ったりとしています。主人の母も一緒に暮らしているのですが、家族みんなで旅行に出かけています。