「自分のお店、やっぱりやろう。」|Wine Cafe「Sarto」木下 真奈美

「妹と一緒にお店をやりたい。」

出身は松本市です。就職も地元でしましたが、その後、東京へ転勤になり、それから7年程働きました。その中で気持ちの変化があったんです。
仕事はやりがいもあり、不満があったわけではなかったのですが、地元に帰りたい想いが強くありました。そして、松本に帰るのならば、「妹と一緒にお店をやりたい。」と考えていました。
妹のちーちゃんは長野でずっと飲食業をやっていました。お店をやるためにはもちろん自分も知識をつけなければならない。仕事と並行しながらフードコーディネーター、料理やお酒についてなど飲食店開業に役立つ資格の勉強をしていました。

修行を積む度に

それから長野に帰ってきたのが36歳ぐらいの時です。
今まで飲食店でアルバイトもしたことがなかったので、いきなりお店「ワインカフェ Sarto」 を出すなんて甘い世界ではないと思っていました。そんな想いから、アルバイトを始めます。最初は松本の飲食店。そのお店の取引先に、それからしばらく働くことになるイタリア料理店がありました。アルバイト募集の張り紙を見つけ、働かせてもらうこととなり、当時は、2店舗同時に働いていました。


しかし、働いているうちにもっとワインの勉強をしたくなり、イタリア料理店一本で働くこととなります。
そのお店では姉妹店での勤務も含め6年程働いていました。自分の中では、ソムリエになるきっかけとなったオーナーとの出会いから始まり、今でもお付き合いのある当時のお客さんや一緒に働いていた同僚、同業種で先々お世話になる方々など、様々な人達に出会う機会となり、確実にターニングポイントとなったお店です。大変なことはたくさんありましたが、本当にこの店に出会えてよかったと思っています。
しかし、ここで働いているときはお店をやろうという気持ちはどこか消えていました。最初は「お店をやろう。」と思ってこの世界に入ったのにです。働けば働くほど「まだまだスキルが追いついていない。」と感じていました。ソムリエの資格を取ったからってワインを知った気になっているけど、飲食業に入ってまだ数年。それでお店を出すなんてそんな甘い世界ではないと思っていました。「もっと色々なことをできるようにならないと、もっともっと勉強しないと。」とずっと思っていました。

「自分のお店、やっぱりやろう。」

イタリア料理店を辞めた後、飲食業は離れていましたが、地元で開催されるワインのイベントはずっと手伝っていました。そのイベントでワインを案内している時に、来場したお客さんが私の事を覚えてくれていて、「以前、お店でワインを色々教えてもらって嬉しかったです。」「去年もワイン案内してもらったんですよ。すごく美味しかったので、今年も案内してください。」と言っていただけることがありました。その時に「私、やっぱり接客の仕事が好きだから、やらなければダメだ。」と強く感じました。同時に、「自分のお店やっぱりやろう。」と。


妹のちーちゃんには毎年毎年「お店やらない?」と伝えていました。しかし、「お姉ちゃんとやりたいお店が違うからやらない。」「まだそのタイミングでない。」とずっと断られていて、、。
でも自分の中で心境の変化もあり、もう一度「ちーちゃんやろうよ。」と誘ったところ「じゃあ、やるか。」と折れてくれたんですよね。(笑)それでようやく一緒にお店をやる事となりました。
自分がお店をやろうと思った時にどうしてちーちゃんを誘ったかというと、料理を100%信頼して任せられるのはちーちゃんしかいないと思ったからです。ずっと断わられていたら一人でつまみ程度の料理を細々とやっていたと思います。(笑)
決してトントン拍子で来たわけではない。紆余曲折もありながらここまできました。

美味しい料理と美味しいワイン

ワインを出すことは決めていました。ワインは気軽なテーブルワインのようなものから、ちょっと手を伸ばせば飲める高いワインも取り揃える。多種多様なワインが飲めるお店を意識しました。
そして、ちーちゃんは料理は和洋なんでもできる(彼女なりの努力はかなりあったと思います)ので、ジャンルにこだわらない料理でワインと相性の良いもの。美味しい料理と美味しいワインは絶対にセットでありたい。そんなお店を目指していました。


いつもキッチン側からお店全体を見ると、みんな楽しそうに食べて飲んでいる。その度に「私はこういう場が作りたかった。」と思います。
お客さんの家族の形態が変わっていくのも嬉しいです。昔は独身だったけど、結婚して子供ができ、今度は家族で来店する・・・お店の歴史と共にお客さんの変化を感じることができるのはとても嬉しいです。
また、姉妹でやっているのでアットホームさが売りとも思っています。
若い人に来て欲しい!(笑)若い人にいっぱい来て欲しいと思っています。ワインってそんなに難しい飲み物ではないことを伝えたい。わからないことは会話をしながら楽しんでいただければと思います。
気軽に手に取ってもらいたい飲み物であって欲しいと思っています。

「翔のワイン売るね。」

週末お店でバイトしてくれている翔君とは、当時イタリア料理店で一緒に働いていました。彼はソムリエをとる勉強をしている時に「自分でワインを造りたい。」と思うようになり、ソムリエをとった後にお店を辞めて、須坂のワイナリーで働き、ワイン造りとブドウ栽培を経験。さらに地元が安曇野でもあるので安曇野のワイナリーでも勉強し、去年の11月に自分のワイナリーを作りました。


その時はまだワイナリーはできていませんでしたが、以前一緒に飲んだ時に、「ワインの勉強して、自分でワイン造ります。」と伝えてくれたことがあります。その時に「じゃあ、私がいつか自分のお店を出した時に翔のワイン売るね。」と返しました。実際に自分がお店をやることになって、そのワインを実際にお店で売っている。当時は夢を語っていただけだったんだけど、現実になった。その瞬間がとても嬉しかったのを覚えています。

母の作る唐揚げ

一回召し上がったお客さんは次に来店されても必ず頼むメニューですが、オープン当初はメニュー入りしておらず、ある時お客さんからのリクエストで作ったらこれが大好評。その次の日からメニューに入れることになりました。私たちの母が唐揚げが上手で子供の頃から大好きな料理でした。お店で出している唐揚げはニンニクが入っており、お酒に合うメニューになっていますが、その味に似ています。家族が多かったので、毎回「お母さん、唐揚げ何個ずつ?」と聞いて取合いになっていました。私たちも一番好きなメニューだし、思い出の料理です。

最後に一言

美味しいワインと美味しい料理を用意して皆さんをお待ちしております!