アメリカで見た景色|The Source Diner 安達 真

アメリカへの憧れ

アメリカに憧れるきっかけになったのは、映画だと思う。あと、ちっちゃい頃やっていたアメリカのドラマ。ナイトライダーとか特攻野郎Aチームとか。(笑)映画、ドラマを見ていたのが原体験だと思う。ナイトライダーって車が喋るのよ。悪い敵を倒すんだけどそいつがすごい車なの。「アメリカってこんな車あるの?」って。アメリカに対する憧れに繋がったと思う。アメリカや西洋に対する憧れは自然と刷り込まれていったから。「いつかアメリカ行きたい。」って。アメリカに対する想いはずっとあった。

アメリカで見た景色

人のフランクさとかをマネしたいというか、そうありたいとは思ったかな。日本だと特に従業員とお客さんって立場になるけど、アメリカは対等なの。日本はお客さんが神様だって思っている人たくさんいるだろうし。うちに来る人はあんまりそういう人はいないんだけど。俺が偉そうだからだと思うんだけどさ。(笑)アメリカだと必ず挨拶があるわけ「Hi!」「Hello!」とか。ほぼ挨拶から始まるし、日本みたいにどこ見て言ってるかわからない「いらっしゃいませ」に対してお客さんって「どう返すの?」って話じゃん。だから、俺はあの言葉が嫌いで必ず挨拶をする。まず挨拶から始まって、目を合わす。それが大切だよね。

当時、お店の奥にキッチンを作ることにしていたんだけど、内装をやってくれた友人に「やっぱりキッチンの位置変えたい。」と相談をして変えてもらった。奥にキッチンがあった方が、ストックルームが近くにあったりと便利は便利なの。でも、席が遠いお客さんと触れ合うことが無い。それが嫌だったんだよね。

日常と非日常

お店にずっといるわけでは無いので、街に出るじゃん。自分の生活している街に出る。その時に気持ち良いかどうかは大切。僕らよく旅行行きますと。みんなも旅行好きじゃん。なんで好きかというと色々な理由があると思うけど、日常から非日常に行きたいわけじゃん。そういうものが楽しくて行く。だけど、旅行行かなくても自分の街がそういう街であれば別に毎日生活していて、日常と非日常を行ったり来たりできるようになるなと思っていて。もう無くなっちゃったけど、ニューヨークで働いていた「The Adore」ってお店があるんだけど、The Adoreに関しては俺の日常だったわけ。でも、日本に帰ってきてしまえば完全に非日常だし、働く前も非日常。「俺、ニューヨークのカフェで働くのか。」とんでもない高揚感と緊張と不安。それが働いてしまえば日常になっていったわけ。


アメリカにいた時はよく国内旅行をしていて、サンフランシスコのTriesteに行ったときにそこにいる人ってこのお店に行くことが日常でしか無いわけ。俺だけ非日常でそこにいた。その交錯している感じがすごく良かったし、「その人たちの日常に溶け込みたい。」ってすごい思ったの。そんなこと出来ないんだけど。「こんなお店があるなんてすごい素敵な日常じゃん。」って。

街の日常

お店にはオシャレな人だけでなく、どんな人が来てくれても良い。でも、横柄な態度だけは許さない。俺はあなた達と対等だし、俺のお店のルール内で楽しんでくれればそれで良い。ここは他人の家だから。「他人の家行くときになんで自分のルールを持ち込むの?」って。
逆にオシャレな人しかいないのは嫌なのね。というのは、街の日常になっているカフェや、飲食店って色んな人がいるわけよ。若い人もおじいちゃんもいる。お店もカッコ良いんだけど、カッコつけたカッコ良さじゃ無いのよ。こういう絵がすごく好きだから、お店としてこうありたいと思ってるね。

当初、オープンしてすぐは若い人しか来なかったのね。でも、少しずつ色々な人が来てくれるなという実感はある。でも、これは10年20年やっていないとそういう絵にはならないし、難しいよね。おじいちゃんおばあちゃんが日々使うお店ではありたい。でも、うちはコーヒーだけとかやらないから日常使いはできないんだけど。

たまに近所のおばあさん3人が来て、「今日なにあるだ?」「メニュー見てください。」みたいなやりとりはするね。あの人達何にも見ないから(笑)めんどくさいなって思うんだけど、それがまた面白かったりするんだけどね。見ようとしない。全部聞く。(笑)でも、これは俺がやろうとしてたコミュニケーションだよなって気づいたりする。めんどくさいからメニュー置いといて聞くだけにしているわけだから。おばあさんは俺が忙しくても関係ないの。「何があるだ?」って聞いてくる。でも、これが本来の姿であって、「わからないことがあれば聞いてください。」ってスタンスだけど、出来ていないのに気づかされる。改めて「あっそうか。」って。

「抱きしめてあげなければダメだよ。」

誰に対して商売をしていくかは一番難しいところかなと思ってる。やっぱりマスに向けて商売しないと成り立たないと思っているから。でも、マスの人たち誰でもウェルカムはやりたくない。俺は俺のカッコ良いと思うことをやりつつ、その人達にもアプローチする方法を探らないといけない。例えば、「売れていないインディーズの時の方がカッコ良かったよね。」って言う人いっぱいいるじゃん。メジャーになってやめる人もいると思うけど。でも、「売れてお金稼いでなにがダメなの?」って思うの。昔のファンが離れることは残念かも知れないけど、でもあなた達よりお金くれるんだよって話で。自分のポリシーから外れたことをすることでこんなお金ってもらえるんだって。そのバランスだと思うんだよね。

でも、実際来てくれるお客さんって当初想定していた友達より、そうじゃない人達の方が圧倒的に多いのよ。このお店が好きになって来てくれる人の方が来店頻度は高いし、そういう人っていわゆるマスの人達。だけど、こういう場所に引っかかってくれる。世の中にはもっと入りやすいお店だったり、めんどくさくないお店って沢山あると思うけど。俺はルールを逸脱するとすぐ不機嫌になるから。(笑)でも、それをクリアしてくれればすごいウェルカム。

少し前に心に響いた言葉をもらって、名古屋の「EARLY BIRDS BREAKFAST」や、「Circles」っていうお店をやっている社長さんの言葉。「お店なんて入りづらくて良いんだ。だけどその門を開けて入って来た人に対しては抱きしめてあげなければダメだよ。」って。門を開けるのにすごい勇気を持って来てくれてる。「入りづらい。」ってよく言われるし、「なんのお店かわからない。」って言われる。だから一見さんってほとんど来ない。何かの情報を持っている人がやっと来るお店だと思っている。その言葉を聞いたときにハッとして。そうだなと。

飲食業を変える

飲食業って底辺だと思っていて。働きたくない職業ランキングでもコンビニ店員と並ぶぐらい。本当にそう思っていて。昔は、独立したら儲けられるという夢があったみたいだし、料理人も腐るほどいるっている感じだったみたいなのね。人の流動性は早かったと思うんだけど、地位が上がっていくと給料も貰えるし、独立すれば豊かな生活が送れる構図があったんだけど、今は違う。飲食業に人がいないし、どこも人が足りていない。


24〜27歳のときに働いていたニューヨークのお店は日払いだったんだけど、余裕があったの。週2日休めたし、1日8時間ぐらいしか働いていない。これが俺のキャリアのスタート。日本帰ってきて東京で働いたお店は、時給790円だよ。多分東京の最低賃金だと思うけど。時間もやけに長いじゃん。週1しか休めないし。ほんと嫌だったの。当時の料理長もボロボロになって働いていたし、子供が生まれたばかりだったのに子供とも会えないとか。何をしているんだろうという感じ。「早くアメリカ帰りたい。」って思ってた。毎日ね。

もっと頭使えばお金もらえるはず。でも、現状に疑問を感じない人がほとんど。思考停止しているんだと思う。飲食業の人が地位が低いままなのは嫌だし、変えたいと思っているから。自分のお店は休みはとるし。それでも稼働している時に稼げば良いから。なかなか上手くいかないけどね。ちゃんとやっていれば俺らみたいに休んでも稼げるんだよって示さないと、自分のお店を持ちたいっていう人もいなくなっちゃう。俺よく「生まれ変わったら飲食業やらない。」って言ってるんだけど、大変だもんやっぱり。日本の飲食業の人達が思考停止しているのに物申す為に俺は休む。それ言いながらも俺が稼いでなかったらカッコ悪い。カッコつけていて、稼げないのが一番カッコ悪い。休んでて火の車じゃんってなったらダメなのよ。だから店が稼働している時に、お客さんがバンバンくる、休む時は休むって状況がなければならないんだけどね。難しい。日々考えていないとね。

負けたくはないよね。少なくとも松本の店では一番でいたいし。ナンバーワンよりオンリーワンって言葉があるけど、ナンバーワンじゃないと意味ないでしょって思うから。