インタビュー2019.04.07 Text By ryosuke kobayashi ,
Photographs By ryosuke kobayashi

「パンを作りたい。」|小さなパン屋さん「weggli」小野 綾子 #1

小さなパン屋さん weggli

小野 綾子

地域密着天然酵母

小さなパン屋さん weggli
小野 綾子

退職の決断

出身は松本です。高校卒業後は、「トリマーになりたい。」と思っていました。ですが、当時は専門学校が東京、名古屋ぐらいしかなく、親からは「家から出さない。」と言われていたので、その夢は諦め、地元企業へ就職を決めました。出産を機に退職となりましたが、その会社には10年弱勤めていました。自分は企業の小さな歯車でしかない中で、このままなんとなく勤めていくよりも、結婚して、子供を産んで、子育てをしてという方が魅力的に映りました。30歳手前での決断でした。その時、食に携わりたいという気持ちは全くありませんでした。

将来への不安

それからガッツリ子育てをしていました。ですが、子育てをしながらも手に職がない状態で、「次はなんの仕事をしよう。自分には何にも取り柄が無い。」という不安が強くあり、自分自身が社会に取り残されている様に思えました。


強い危機感を抱いている中で、子育てと並行して仕事ができるワープロを使った日本語文書処理の資格を取ることにしたんです。ゲーム感覚でやれるのが面白くて、夢中でやっていましたよ。(笑)その後、たまたまご近所の奥さんから職場の紹介を受け、文書処理の仕事を始めることとなります。印刷会社に持ち込まれた文書をデータする仕事です。15年ほど勤めていました。楽しかったですね!(笑)子育て中、抱いていた危機感から「何かやらなきゃ。」とたまたま勉強し始めたことが、これだけ続けることができたのは、本当に運が良かったと思います。

幼き記憶

パンを作り始める大きなきっかけは、ヤマダ電機のポイントです。(笑)自宅の電子レンジが壊れてしまって、ヤマダ電機へ買いに行ったところ、ポイントが貯まっていることに気づいたんです。このポイントでオーブンレンジを購入しました。帰宅して、説明書を読むと、「パンが作れる!」と。(笑)


思い返すと、小学生の頃、兄と一緒に小さいトースターでパンを焼いた経験がありました。パンが焼けた瞬間に感動したのを覚えていますが、それよりも「パンって難しい。」という感情の方が大きかった覚えがあります。当時は失敗したけれど、「焼いてみたいな。」と思い挑戦したんです。レシピ通り作ったら、これが美味しい。それから本当にハマり、週末になると朝からバシンバシンとこねて、発酵させてと、1年くらい毎週末作っていました。
その時初めて、「パンを作るのがこんなにも楽しいなら、仕事にしたらもっと楽しいかも。」と思い始めました。
この時は、まだ文書処理の仕事をしていたので、土日だけでもどこかのパン屋さんで勤めることができないかと仕事を探していました。後に、小さなパン屋で働くことになります。

クープの魅力

パン屋さんでは、基礎をしっかり学ぶことができました。パン生地を丸める作業は、美味しく作るには基礎の作業です。1日何百個とやっていたので、基礎をしっかりと身につけることができました。ですが、勤めてからの4年間は、主に配達や雑用でした。
パン作りのレベルアップの為に情報収集をしていると、とあるブロガーさんに出会います。

その方は主婦ですが、もの凄くカッコ良いパンを作る。とにかく、美しい。クープ(※)がメリッと開いているフランスパンがとても印象的でした。でも、家庭用のオーブンでこのクープを作ろうとしても絶対に開かないんです。見よう見まねでブロガーさんの作り方を実践してみたこともありました。100均で使えそうなグッズを買って、オーブンをアレンジしてみてと、、、。でも、何時間も発酵に時間をかけて、いざオーブンを開けてみると2割ぐらいしかうまくいっていない。こんな大変な思いしなければ焼けないのであれば、もう諦めようと。それからしばらくフランスパンから離れていました。

※クープ:パンを焼き上げる工程で、ふくらんだ時に表面が割れたりしないよう、焼く直前にパン生地の表面に入れる切り込みのこと。

「パンを作りたい。」

しかし、パン屋に勤めて5年目。社員が1人退職してしまい、パンの製造業務に本格的に携わるようになります。それが業務用のオーブンではいとも簡単にクープの開いたカッコ良いフランスパンが焼けるんです!(笑)

あの頃何年もかけて必死にやってきたのに「業務用オーブンだとこんな簡単にクープが開くのか。」と。70cmの本格的なフランスパンもバシッと焼けるのは快感以外の何ものでも無い。業務用オーブンの威力を知ってしまうわけです。ですが、あることをきっかけにこの年に、そのパン屋を退職することになります。そうすると業務用のオーブンは使うことが出来ない。
「フランスパンを焼きたくて、焼きたくて、、。」もう「作りたい!」という渇望です。せっかく覚えたのにもうあのパンを焼けなくなると思うと、もったいないし、技術も忘れてしまう。でも、逆にあのオーブンさえあれば焼ける。(笑)それからネットでオーブンを必死に探す毎日です。趣味で焼く為に、100万ほどのオーブンを買って、床を補強してとなるとあまりにも現実離れしている。でも、お店を開いてしまえば、業務用のオーブン買えるなと。(笑)「もうやっちゃえ!!」という勢いもありました。どうしても業務用のオーブンが欲しかったんです。(笑)

 

小さなパン屋さん weggli

■住所 〒399-0701 長野県塩尻市広丘吉田1250-1 Googlemap

■営業時間 11:00-18:00 定休日:水曜日、金曜日、日曜日

■TEL 090-8842-0575

HOME